-Uri Column- / Comics


THE END/真鍋昌平

いやはや、なんとも困った作品ではある。


どうしてもこの作品のレビューを書きたくって、実は何度か書きかけてはみたのだけれど、結局書けていない。
ちょっと考えをまとめるために、ここで下書きというよりもメモを残す。

まず全体のトーンとして、タランティーノっぽいアンダーグラウンドの雰囲気がうまく出てて、僕たちが見ている平和な日常の風景の少し裏側の描写に刮目。

セリフもいい。心の表現としての言葉の持つ大切さが、衒いもなくストレートに表現されていて、思わずドキッとしてしまう。この作品のいちばんの魅力だと思う。

ストーリーそのものは、けっこうあるパターンかもしれない。「今の自分が実は本来の自分とは違った存在で、記憶が封印されている」パターン。しかもご丁寧に、一人ずつ仲間を集めるという黄金律も採用されている。大筋だけ見たら、ちょっと陳腐な匂いを嗅ぎ取る人も多いと思う。

作品のバックボーンというか、ストーリーの基となるのが最近はやりの「現実の喪失感」、いわゆる居心地の悪さである。登場人物は現実的な日常に違和感と空虚感を感じながら、ほんとうの自分に“帰る”ことを希求する。

ただしそれは萩尾望都の大きなテーマの一つである「自分探し」的なアイデンティティの探求というような内向的もしくは内省的なものではなく、たんなる「愚痴」レベルであって、それだけに登場人物が抱えるイラダチやストレスがリアルである。

そう考えてみれば、サリンジャーのライ麦を彷彿とさせるのではないかとも思うのだが、ライ麦は昔一度読んだだけなのでもう一度読み直す価値はあるかもしれない。

最近の漫画に確かに存在する一つの傾向として、現実を否定することによって現実を描写するという一見後ろ向き、でもほんとうはもっと後ろ向きな印象を与える手法があるが、そのハシリかもしれない。違うかもしれない。

ものすごく残念なのは、やはり途中まできっちり描きながら最後はバタバタバタとトランクに荷物を詰め込むような中途半端に終わってしまったことか。人気がなかったのか、作者の事情かはわからないけれど。

ってな感じかな。

Last Update : 2003/12/10

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